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- Date:2025年05月23日
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更新完全停止(廃棄物) 見ていただきありがとうございました。
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悟飯はある場所に向かうため全力で飛んでいる。
あれ以来姿を隠すように消えた人を探すためだ。
今でもあの時のあの行動が正しかったかどうかわからない。
わかるのは父の寿命を縮めてしまったということ。
いつもの笑みとは違う少しわくわくしている父の顔が見れたということだけ。
(お父さん、あの世では元気にしてますか?)
見上げた空は憎らしいほど、爽やかだった。
天高く舞い上がる
「ダメだダメだダメだ!」
部屋の奥で母の声が聞こえる。
「……」
父が何かつぶやいているようだがここからは聞き取れない。
「悟空さ、今悟空さが無理したらダメだ。きっと良くなるだ。だから今は我慢してけろ」
静かに言っているが頑として譲らぬ思いが伝わってくる。
後半は涙を必死に堪えるかのように懇願するように必死な姿。
昔からそうだ。母は自分が決めたことを何が何でも押し通す頑固さがあった。
「今から夕飯作ってくるだ。絶対にダメだぞ!」
母は念をおして悟空に言い聞かせた。
本来ならずっと付っきりでいたいが、母だって日常生活があり家事もしなくてはならない。
それを受け入れ機敏に生活している母はやはりすごいと思った。
「頼むから無茶だけはしないでけろ…生きてけろ」
涙を流しながら、父にはいえない言葉を良くつぶやいていた。
何もしなくてもいい、何もできなくてもいい。
ただ、そばにして欲しいと願うだけである。
母の願い
それは、より長く共にいて欲しいということだった。
長く生きることであるはずのない奇跡を待っていた。
一日でも長く悟空さには生きて欲しい…。
だから、寿命を縮める願いはどうしても聞き入れることが出来ないのだ。
+++
「なぁ、悟飯。やっぱダメかな?」
チチは頑固だから、これと決めたらよほどのことがない限り聞き入れてもらえない。
「………」
ボクは何も答えれない。
だって、母の気持ちが痛いほどわかってしまうから…。
「オラ、ただ…会いたいだけなんだけどなぁ」
父の願い
それは…サイヤ人の血が起こす本能。
外に出たい、そして強い奴と戦いたい。
強くなること、戦うことが好きな父らしい願い。
昔は当たり前だったことが果てしなく難しくなってしまっていた。
「なぁ、悟飯」
ちょっとだけでもいいから、外に出たい。
父はボクを見て笑う。
その笑みを見ていると辛い。
困ったようなそして諦めているようなそんな笑み。
「お父さん、お父さんは…」
どうしてそれを願うのですか?
それは言葉にならずに喉を詰まらした。
「チチが悲しむのはわかってる。だけどなぁ、ずっと家の中にいるとさ」
良いことも、悪いこともいっぺぇ考えちまう。
考えれば考えるほどどうでもいいことが叶わないとか出来ないとかいろいろ思い知らされる。
昔は後で考えりゃいいって思ってそのまま忘れちまうことが多かった。
だけど、今ですることといえば考えることだけだろ?
「オラなりの結論なんかな?」
気分転換にでもいいから外に…。
頼むと力ない手でお願いする。
ボクは知っている。
外に出たらきっと父のとる行動はただ一つであることを…。
それでも、これだけ願うのだ一度ぐらい外に出ても大丈夫じゃないかと思った。
「今、体調なんともない?」
「おう、今はわりと元気だ」
ちょっとぐらいいいよね。
だって、父がこんなにも願っているんだから…。
「お母さんには内緒だよ?」
「チチは怖ぇからな」
父がゆっくり体を起こすそれをがんばって手伝う。
父の身体は思いのほか軽く、あんなに逞しかった身体は幼い自分と変わらないじゃないかと思うぐらい細くなっていた。
時折、心臓の循環が追いついていないために締め付けられるのか、休み休みしながらやっと、窓からこっそりと外に出た。
立っているだけでやっとの状態だったけど、風に当たったそのほほはすごく眩しそうだった。
「なぁ、おめぇささえてんの大変だろ?」
だから、筋斗雲、呼んでくんねぇか?
声も張り上げることが出来ない、一人で外に出ることも出来ない。
全ての現状が、父が如何に蝕まれているかを理解する。
「うん」
ボクは大声で筋斗雲と叫ぶ。
筋斗雲はすぐに駆けつけてくれた、相変わらず黄色くてふわふわしていた。
父はゆっくりと、そっちに乗り移り大きなため息を少しつく。
「悟飯。チチに怒られるんは、オラだけだからな」
オラが戻ってくるまで内緒だぞ。
何故この時ボクは止めなかったんだろうって考える。
「悟飯ありがとな」
笑う父は逆光で眩しかった。
不安そうに父を呼ぶと、力強い手で頭をなでてくれた。
「やっぱり、オメェはオラの自慢の息子だ」
そう言ってから、ふわりと筋斗雲の高度が上がる。
「お父さん?」
「ちょっくらいってくるわ。すぐ戻っから」
筋斗雲に乗っているといっても自分が振り落とされないためかあまりスピードは出てなかった。
追いかけることは可能だった。
きっと、追いかけて一生懸命止めていたら父も諦めて、ベッドに戻ってくれていただろう。
だけど、やっぱり何度同じ場面に遭遇しても、結果がどうなるかわかっていたとしてもきっとボクは何も出来なくて同じことを繰り返す。
あの少しわくわくしている父の横顔を見た瞬間からこの運命は決まってしまっていたんだ。
+++
あの後、父がどういう行動を取ったのか分からない。
分かるのは久しぶりに父の力強い気を感じたってこと…
父の近くでベジータさんの気を感じたってことだけだ。
ボクは父の気が急激に弱まるまで、その場でその大きくて心満たされる暖かさを感じていた。
次から次へと、溢れる涙を拭うことも出来ずに…。
「ベジータさん…」
見上げるとそこに気を失っている父をかかえているベジータさんがいた。
「逃げられたくなければ、鍵をつけて閉じ込めておけ…」
掘り出される父を慌てて支えながらベジータさんを見た。
眩しいほどに煌めく金色の髪。そして、エメラルドの瞳を見て思う。
(あぁ、だからお父さんは外に出たかったんだ…)
苦しそうに喘ぐ父の顔は何処か満足していた。
ベジータさんが父の願いを叶えてしまった。
ボクも母も、お父さんの仲間のみんなが叶えられなかった願いを…。
何故叶えたのか、どんな思いで願いを聞き届けたのかボクはこれ以上は詮索するのを止めた。
ただ、立ち去ろうとするベジータさんに一言伝えなければ…。
「ベジータさん。ありがとうございます」
「ふん」
きっと忘れない。
ベジータさんの笑みと憔悴感。
そして、金色に輝くその後姿を…。
家に帰ると、母とおじいちゃんが心配そうに玄関の前で待っていた。
母に怒られると思ったけど、何処か悟っていたのか、ボクには何も言わず父の名前をずっと呼んでいた。
あれから、ボクが見ているときに父は目覚めることはなかった。
母は一度だけ、言葉を交わしたと言っていた。
少し嬉しそうで悲しそうな母。
…昏々と眠る父を見ているとどうしようもなくて、後悔だけが押し寄せてくる。
ボクにとって父との会話はあの頭をなでて笑ってくれた父のあの言葉が最期となった。
そして、数日後、晴れた日の夕暮れ、皆に看取られてこの世を去った。
+++
パタパタしていた家に静けさが戻ったある日。
ボクは独り空を漂っていた。
「お父さん、あの世では元気にしてますか?」
今から、お父さんが遣り残したことを片付けに行きます。
きっとお父さんのことだから、そこまで考え付かなくて満足しちゃってるんでしょうね。
知っているでしょうに、残される辛さを…。
僅かな手がかりを探しっ出してボクは降り立つ。
「お久しぶりです」
岩の上に固視を下ろしているベジータさんをまっすぐ見た。
いつか見たあの金色の姿をしていなかったが分かった。
彼の意志はまだ死んでいないことを…。
だから、ボクは頼む。
「鍛えてもらえませんか? サイヤ人の力を出せるように」
まっすぐ見つめる。
怖がってはダメだ。
昔、決意したあの時とはまた違う思いがある。
「オレじゃなくてもいいだろう」
「いえ、ベジータさんにしか出来ないことです」
父がかつて輝いていたあの金色の姿に…。
あの金色に輝く姿を父の意志を継ぎたい。
「ボクはお父さんの息子です」
弱いままの自分が許せない。
「…ふん。好きにしろ」
「ありがとうございます」
ボクはもう逃げない。
End
色々すいませんでした。収拾つきませんでした(いつもそんなんばっかりですねorz)
未来編妄想、カカベジ妄想side悟飯です。
別にカカベジsideがあるわけじゃないでけどもごもご。
それは、もっと素敵に書いてくださる方にお願いします(逃亡)
ここまで、長々と読んでくださった方ありがとうございました^^