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- Date:2025年05月22日
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更新完全停止(廃棄物) 見ていただきありがとうございました。
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すこし肌寒さが残る季節。
快晴の空が窓越しからでも眩しい。
集合アパートの二階の一番奥で僕達兄弟は暮らしている。
少しぼろいけど家賃は安くてあまり裕福でない僕達にとって凄く快適で申し分ない。
苦悩は沢山あったけど、今僕は幸福を噛み締めている。
願わくばこの平穏がずっと続きますように…。
朝日に出迎えられて…
目覚めの良い日の光を浴びながら僕は伸びをする。
そして日課となりつつある二段ベッドの上に寝ている奴を起こしにかかる。
つい先日まで不快音で喚き散らしていた目覚まし時計はまだ寝ている彼の天誅により大破し、役に立たなくなっている。
捨てたくないという彼の要望で飾られたままだがかなりぶざまな姿だ。
「ティメ! ティメったら、起きろ!」
双子の弟であるティメは朝が苦手な完全夜型体質。い
っつも夜遅くまで何してるのか全く謎。まぁ八割方しょうもないことというのは長年の付き合いで理解しているつもりだ。
だけど、いくら双子といえども解らないことも多い。
昔ほど一心同体ではなくなってしまっている。
ガタゴト
隣の部屋で物音が聞こえた。ミラ兄さんが起きてきたという合図。
一方ティメは…。
あんだけ荒く扱ってもびくともしないで夢の中のままだ。
「ティメ! 起きろー!」
今日はティメが朝食の当番なんだよ。
だから起きてもらわなきゃ困る。
ゆっさゆっさ揺するも顔をしかめるだけで起きない。
しまいに…
「チュウしてくれたら起きるかも~」
なんて言い出す始末。本当に寝てるのかと疑いたくなる。
ここは地雷を落とすしかない。
僕は小さくため息をついから耳元で静かに呟いた。
「兄さんが起きたよ。もしかしたら朝食作り始めてるかも…」
ガバッ!?
それだけはまずいとばかりに飛び起きて着替えもせず梯も使わず飛び降り、その勢いのまま扉から飛び出して行った。
「ミラ兄!? 早まるな!」
全くさっきまで寝ていたとは思えないすばやさだ。
「そういうところが羨ましいんだよね」
苦笑いしながら梯を降りる。
着替えを済まして出てみればティメが無事に阻止できたらしくフライパンを操っていた。
もう大分慣れたが何故かピンクのフリルのついたエプロンを着用している。
理由を聞けば男の浪漫とわけのわからないことを言っていた。
スクもどう? と勧められたが丁重にお断りしている。
「スク、お早う!」
新聞を読みながらコーヒーを飲んでいた兄さんが挨拶してくれた。
七つ上の兄さんでとっても優しくて便りになるのだけど…。
「ティメはどうしても俺に料理させたくないみたいだね」
なんでだろ…。と呟く兄さんに苦笑いを返しながら自分も席に着く。
兄さんの料理はかなりワイルドだ。
焦げているだけならまだマシで、たまにどうしたらそんな料理になるの? といいたくなるようなものが出てくる。
だから自分達が料理が出来るようになってからはティメと交代制で作るようになった。
それまではまぁいろいろあったんだけど…。
「俺様特製スペシャルモーニングセット!」
のんびり寛いでいると運ばれてきた料理。
ティメはやりだすまではめんどくさがっているけど一度やりだしたらスッゴク凝るタイプ。
下手したらプロ顔負けのすごさかもしれない。
今日の朝食のメニューは…。
プチトマトとレタスを添えたオリジナルソース付きオムレツにあったかコーンスープ。
食欲をそそるロールパンに真っ赤な苺ジャムが綺麗に盛られている。
…本当にティメは凄い。
「いただきます」
と手を合わせればティメは何処かに行く。
「どこ行くんだ?」
ミラ兄さんが問い掛ければ「着替えてくる」といい。
僕に向かってなんか嫌な笑みを浮かべる。
「スク…覗くなよ」
「覗かないよ!」
本当に完璧なくせにツッコミを入れたくなる阿保さはどうしようもない。
しかも、ウインク付きだ。
小さくため息ついたらミラ兄さんが微笑みを返してくれた。
うん、わかってる。
ミラ兄さんにとってまた三人で暮らていることがどれだけ幸福で堪らないかは…。
僕だってまた兄さんやティメに会えたことは嬉しい。
だけど必死で追い掛けていたあの背中があまりにも遠くなっていて泣きそうになる。
「そろそろ出ないと間に合わないな」
ミラ兄さんの呟きで時計を見れば7時45分。
電車を使うほどじゃないけど家から通っている学校まで少し遠い。
ティメの様子からもう少しかかりそうだと思いミラ兄さんには先に行ってもらうことにした。
残念そうにしてたけどあまり無理させたくない。
これもそれもみんなティメが悪い。
そう結論づけて扉を叩く。
「ティメ急げ!」
「まて、髪型が決まらない」
洗面所で粘っているティメに声をかければまたしょうもないことにこだわっているみたい。
「凝ったっていつもたいして変わらないよ」
「カッコイイってか?」
あまりに嬉しそうに聞いてくるもんだから思わずそっぽ向いて呟いた。
「論外ってこと」
「グサッ」
ショックを受けましたポーズをとり床に沈む。
「口で言うな!」
ってこんなことしている場合じゃない。
我に帰って時計を見れば長針は12のところを指している。
「ヤバイ」
このままだとティメが自分で作った料理が食べられない。
「ティメ!」
「俺に早食いをさせれば右に出るものは…」
「そんな御託はいいから食べろ!」
フォークをもったまま得意げにポーズを取っているティメの言葉を遮り声のトーンを下げる。
慌てて食べ出すティメを見てから取り合えず食べ終えた自分らの皿だけでもと洗いはじめた。
「ねぇティメ。朝だけは僕が全部しようか?」
「なんで?」
何となく思ったことをつぶやけば不思議そうな篭った声が返ってくる。
「始業式そうそうこんなんだからだよ」
遅刻だけは嫌だから毎回だと流石に遅刻しちゃいそうで怖い。
「………」
ガタッと音がしてティメが食べ終えた食器を持ってきた。
「行くぞ」
「えっまだ、洗い物が…」
終わっていないっと言う前にティメが時計を指差す。
「もう、10分」
「うそ!? まずい」
本格的にやばい。
洗い物が中途半端なるけどしょうがない。
水に付けてからエプロンを取る。
鞄をティメが渡してくれて、その勢いまま玄関を飛び出そうとした。
ガコン
「~~っ、ミラ兄! 鍵かけるなー!!」
おそらく前からの習慣でやってしまったんだろうな。
ティメが少し悪戦苦闘している中そう思った。
桜舞い散る中。
風景を楽しむ訳もなく、マラソン選手のようにひたすら走る。
僕らが通っている学校は龍球学園という小中高と大学が一つになっているマンモス校。
将来を期待されている子ども達が集められている。
僕自身はツテとおまけで入れてくれたんじゃないかと思うほど周りにいる人達はお金持ちの御曹司や何かに才出ている凄い人達だ。
前方を走るティメを見る。
何時からだろう横に並べなくなったのは…。
ティメの背中を見詰めて必死に追い掛けるしか出来なくなったのは…。
「なぁスク…さっきのことだけど…」
前を向いたままティメの呟きが聞こえた。
「何?」
こっちは風下だから声を張り上げないといけない。
「俺頑張るからさ、朝食作るの交互のままにしてくれよ……だから……」
だんだん小さくなるため最後が聞き取れなかった。
「えっ何?」
「何でもない!」
取り合えず、スクだけが作るのはなし!
全く振り返らないで半分叫ぶように否定した。
振り返らないからどんな顔をしているのかわからない。
だから怖くなった。
「分かった。ちゃんと起きてよ!」
「おう!!」
ティメがやっと振り返る。
その顔には満面の笑みが浮かんでいた。
それに釣られて僕も笑う。
「スッスク、スピード上げるぞ!」
「え?」
「間に合わなくなる!」
ティメは僕が理解する前に僕の手をとり走るスピードを上げた。
手を握られるのは恥ずかしいけどさっきまでの不安や恐怖はなくなった。
「だからティメは狡いんだ」
いつも気がついたら安心感が心を支配している。
僕は…。
「なんか言ったか?」
ティメに聞こえないように呟いたから流石に聞き取れなかったみたい。
「なーんにも」
覗き込もうとしたティメを無視した。
僕なり仕返しのつもり…。
視線を前方に移すと学校が直線距離に見えた。
学校まで後少し…チャイムなるまで後数分。
間に合うか会わないか凄く際どいところ。
ラストスパートは短距離走並の全力疾走。
校舎全体にチャイムが鳴り響く。
学校生活が始まる合図。
To be continued
なかなか学校に行ってくれなくて大変でしたw
続きもぼちぼち打ってますので、お待ちください。
もともと、遅筆なので…いつになるか謎めいてますが…。orz
では、個人的サプライズ企画でした^^。