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- Date:2025年05月22日
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更新完全停止(廃棄物) 見ていただきありがとうございました。
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「俺頑張るからさ、朝食作るの交互のままにしてくれよ。好きだから、スクの笑顔が…スク自身も…」
俺の料理を目の前にしたスクの嬉しそうなあの笑顔が見ていたいんだ。
朝から見れたらその日一日が幸せな気分になる。
「えっ…何?」
だけど、この言葉はスク届くことなく空を切った。
少し聞こえてたらと願いつつ聞こえるように言う勇気はまだない。
新年度の悪夢
チャイムと同時に滑り込んだ俺達は小さく溜息を着いてからそれぞれの教室に別れた。
双子だからって教室を意図的に分けるのは不満だがしょうがない。
何時だって一緒に居たいと思っているのに…。
俺のスクへの気持ちは兄弟や双子と言う次元では語れないんだ。
さっき笑ったスクを見たときの心臓の高鳴りは長距離を走ってたからじゃない。
この想いはまだ誰も知らない…はず。
「新学期そうそうギリギリね」
俺が教室に入ると横の席のビーデルがにこりともせず、冷たい「おはよう」の挨拶をしてくれた。
この学園のマドンナ的存在だが彼女自身は誰が好きかを明かしていない。
「スク君に迷惑かけてばかりじゃない?」
「うっ…」
俺的にはスクが標的じゃないかヒヤヒヤしている。
高校入学してからの仲だが手玉に取られている気がしてならない。
警戒を最大にしても読めないなんて…。
スコン…。
「てぇ!?」
何かが俺の後頭部を直撃した。
慌てて振り返れば俺の天敵が不気味な笑顔でこっちを見ていた。
「げっツフル…」
最後まで言えないうちにコンマ零一秒の速さで二個目のチョークが額に激突し座りかけていた俺は見事に後ろに転倒した。
「そこ! さっさと座れ!」
このウスノロが…。
言外の言葉に(台詞が違うだろ)っとか(取るな)とか愚痴る。
ぜってーあいつが教師をやっているのは間違ってい…
グハッ!?
心の中で文句を言ったつもりなのにジャストタイミングに放たれるチョーク。
しかもどうやったらチョークが障害物である机に当たらず野球のスライダー如く曲がるんだよ…。
お陰で俺は数秒意識を飛ばしてしまった。
「返事がないからティメ君は欠席と…」
容赦ないセリフにせっかく間に合うように頑張った努力が水の泡になったことを知った。
(ぜってー横暴だ)
俺は静かに涙を流す。
「あんた何寝てんの?」
しかも奴のあの攻撃が見える生徒は皆無に等しい…。
つまり、端から見れば俺の哀れな一人芝居ってわけだ。
ちくしょう…。
そして体育館に移動し始まるは始業式。
この始業式は何ともつまらないもので欠伸しか出てこない。
しかもこんな朝早くに起きたのも久しぶりだし、今の季節は春。
寝るなというほうが難しいと俺は思っていたんだが…。
「見事に呼び出しかよ」
しかも俺だけ…あの野郎ぜってー何か考えてやがる。
「行ってらっしゃい」
と見送られて納得行かない思いにかられながら廊下を歩く。
バックレたいのは山々だが…そのあとの仕打ちを考えると今行った方がましだ。
それは去年からの付き合いで十分に想い知らされた。
「知りたくもなかったけどな…」
何がきっかけだったか…。俺
は間違いなくツフルに目を付けられている。
いや一種のお気に入りの玩具と言った方がいいか…。
何にせよ俺に利益がないのは確かだ。
あいつの秘めたる想いを俺だけが知ってしまった罰か…。
「あ、ティメ君ちょっといいかな?」
廊下をダラダラ歩いていると不意に声かけられた。
振り返れば温厚で優しいスクの担任の…。
「孫先生」
付属の大学で研究もさせてもらっているらしく、何時も忙しいのか駆け回っている印象だ。
「春休みは満喫したかい?」
にこやかに花が飛びそうな笑顔は本当にもうすぐ三十路を控えているようには感じない。
十代後半ですと言っても通じると思う。
「えぇ、まぁ…」
「でも勉強はしないと駄目だよ」
まぁティメ君は成績が良いから大丈夫だろうけどね。
「はぁ…」
何故だろう普通に会話しているだけなのに俺の邪気が祓われる気がするし、清過ぎる為に自分の汚い部分に吐き気もする。
だからあいつも…何時もは誰にも見せることがない。
あの柔らかいそしてどこか辛そうな笑みを浮かべるんだろうか…。
「あ、もう終礼終わったよね?」
俺の微妙な返答なんてお構い無しに話題は次に移っていた。
「そうっすね」
結構サボり癖のある俺でも始業式そうそうはない。
それにあいつの終礼は早い。
必要最低限しか言わないからな。
逆に孫先生は長いだからツフルの用事をさっさと終わらせば一緒に帰れると思ったがここに先生がいるってことは終わってると言うことだよな。
やべ遅くなるっていわねーと…。
「ちょっと、ツフル先生を探しているんだけど」
知ってる? 軽く聞き流していた先生の言葉にドキリとする。
今まさに行こうとする場所こそその人物がいるところなんだからだ。
「あぁ、ツフル…先生なら…」
何時もの呼び出し場所を告げる。
スクに報告する間の時間稼ぎになる。
それが吉と出るか凶と出るかはわからないが…。
「ありがとう」
急ぎ足で去って行く先生を見送る。
そして機嫌の良さそうな足取りを見て溜息つく。
孫先生が機嫌がいい日はツフルの機嫌が最悪になるときが多い。
というか俺にとってあいつが機嫌良いときなんてあの時の以来見たことがないけどな。
「やばいな、今日は帰れない気がしてきた」
取り合えずは心配させないようにしないと…。
踵を返しスクの待つであろう教室へ走り出した。
「スク!」
ガラッと扉を開け、名を呼ぶが人が疎らな教室に目的の人物は居なかった。
「あれ?」
「スクなら呼び出し喰らってたぜ」
スクと仲が良いシャプナーが嫌な笑みを浮かべ答えてくれた。
「呼び出し?」
まさかスクも間に合わなくて先生から呼び出しを喰らった?
しかも、孫先生とツフルが一緒ってことはスクもその場に…。
サッと血の気が下がる気がした。
慌てて駆けだそうとしたとき、ずっと窓の外を見ていたイレイザが声をかけた。
「スク君ならあそこにいるわよ~」
「何っ!?」
シャプナーと同時に覗き込めばスクが見知らぬ女と並んで話している後ろ姿が見えた。
その光景を見てホッとしている俺とショックを受けている俺がいる。
「結構可愛いじゃねーか」
「彼も隅に置けないわ~」
友達同士でよくやる会話を聞きながらスクの表情が気になって仕方がなかった。
見えないからわからない心理。
相手はとても楽しそうだ。
双子だからってずっと側にいられない。
スクだって何時かは好きな女が出来て結婚して俺の元から離れて行く?
ゾクッ!
寒気が走る。
考えれば考えるほど居た堪れなくて俯いたまま立ち去ろうとした。
「おいティメどこに行くんだ?」
用があったんじゃないのか?
当初の目的を忘れていた俺を呼び止める。
「俺、呼び出し喰らっててさ。スクが戻ってきたら遅くなるから先帰ってくれって伝えておいてくれるか?」
「げっお前も呼び出しかよ」
双子揃って羨ましい奴。
シャプナーが顔をしかめるけどそんなんじゃない。
「残念ながら俺は先生にさ」
「ちょっと新学期そうそう何したのよ~」
イレイザが吹き出すように笑う。
「さーてな。そういうことだからよろしく!」
俺はほとんど逃げるように教室を出た。
最後に上手く笑えたか怪しい。
それぐらい俺の中では深刻だ。
ぐだぐだ悩む俺をアイツなら容赦なく痛め付けてくれるだろうか?
俺は何も考えたくなくて無心になって廊下を走った。
To be continued